リブランディング
RE BRANDING
「とりあえずオシャレなパッケージに変えよう」ではダメなのです。なぜかといえば、パッケージだけを変え、ブランドの想いや実践していることと通じていなければ、何も伝えられていないのと同じだから。そして、それはおそらく生活者のニーズにも応えていないからです。 もちろん、パッケージが変われば一時的に売上が伸びるかもしれません。しかしそれはおそらく、パッケージそのものの目新しさによるもの。 生活者がその商品を手に取る動機は、商品やブランドに惹かれてではなく、「パッケージのよさ」です。ブランドの考え方を適切に伝えているパッケージでなければブランドそのものは「なんだか見た目だけだったな」とすぐに忘れられてしまいますし、元々の商品のファンは「よくわからないけど変わっちゃったな」と離れていってしまうかもしれません。見た目をよくするだけなら、リブランディングとは呼べません。
01リブランディングの成功の秘訣は
Whyは変えず、How・Whatを変えること
リブランディングでやるべきことについて、具体的に考えていきましょう。最初に考えたいのは、ブランドの核について明確にすることです。 なぜブランドの核を大切にするかといえば、リブランディングは元々あるブランドの核を大切にするべきだから。真ん中にはどんな考え方があり、何を目指しているのか、何度でも立ち返る必要があるのです。
02「re」+Branding / ブランドの核を明確にしよう
ブランドの核を明確にしよう
リブランディングについて、さらに考えを深める前に、考え方のフレームとして、「ゴールデンサークル理論」を使ってみます。 ゴールデンサークルとは、世界の叡智を結集したプレゼンテーションでおなじみ・TEDなどでも紹介された、「物事の本質を説明する際に重要となるフレーム」のこと。Why・How・Whatの3要素で円が構成されています。 なぜここでゴールデンサークル理論を使ってみるかというと、自分たちのブランドを世の中へ伝えていく際に、変えてはいけない重要なことと、変えてはいけないことを整理するため。本質を伝えていくためにやりやすいとされるフレームを使い、思想や事業・サービスをサークルに当てはめて考えてみようと思います。
Whyとは「なぜそうするのか」のこと。
ここでは、「企業の信念や目的、つまりミッションやビジョン」だと考えてみてください。
Howは「どうやるのか」
企業やブランドの世の中への露出の仕方や、事業・サービスとしてのコミュニケーションの仕方です。
最後にWhatが「何をやるのか」
企業やブランドの商品・サービスそのもの」としてとらえてください。 この理論において最重要ポイントは、人はWhyに心を動かされるということ。ブランドを伝えていくために、真ん中におく絶対的なものは、企業やブランドのWhy=ミッション・ビジョンなのです。
03伝えるための起点は、Whyに
何かを伝えるためには、真ん中にあるのは、つねにWhy。
HowもWhatも、Whyに従って、考えていくものです。
よくあるたとえですが、Appleは最初から「新しいコンピュータをつくりました、どうですか?(商品=WHATのみ伝えている)」というコミュニケーションをしていないから、人の心を動かすと言われています。 まずThink different.という他とは異なる考え方をすることを掲げ、テクノロジーを介して何百万人という人の生活を変えることを目指していること(何を目的とするか伝える=Why)。 そのために他とは異なる洗練されて感覚的に使え、美しいデザインの製品が必要であることを示す。(どんなことを行うか=How) その上で、コンピュータをつくりました(商品=What)、ということを伝えている。だから、人は振り向くのだと言われます。しっかりとしたWhyに基づき、それに紐付くHowとWhatを伝えていくことが大切なのです。
●Why=テクノロジーで何百万人という人の生活を変える
●How=感覚的に使え、洗練された美しいデザインのものが人には必要
●What=コンピュータをつくる
04リブランディングにおいてはこのWhy、つまり企業やブランドのミッション・ビジョンは基本的に変えません。
ミッション・ビジョンは変えないまま、その目的を実現することと世の中を照らし合わせたときに、自分たちの立ち位置を問い直すのがリブランディングだと考えてください。もしそこで根幹となる「Why=企業のミッション・ビジョン」などがフラフラしている……と感じるならば。そこに必要なのはリブランディングではなく、そもそものブランドをつくること。 コーポレートブランディングが、急務なのかもしれません。
変えてもいいのは、HowとWhat
リブランディングを考える上で変えてはいけないのは、Why=ミッション・ビジョンの部分。そこが、ブランドの核となる部分だからです。
逆に言えば、HowとWhatは変えてもいい のです。
時代に合わせて、ターゲットに合わせて、ミッション・ビジョンを達成するためには、どんなことを辞めるべきか、始めるべきか、変えるべきか。 そこではもちろん、ブランドの顔つきを変えていくためにパッケージやロゴが変わるかもしれないし、新しく立ち上げる事業や終わらせるべき事業もあるかもしれません。一つひとつ、自分たちの立ち位置を考え、やり方・やることを精査していくのがリブランディングです。 例えば、とらやは、ロゴが変わっても、カフェ業態を開始しても(=How、What)、美味しい和菓子を届けようとしていること(=Why)は変わっていません。強いブランドは、強いWhyを持ち、その代わり、HowやWhatは柔軟に変えていっているのではないでしょうか。
05リブランディングで変えること、変えないこと
WHY=変えない。リブランディングの指標
HOW、WHAT=変えてもいい。
WHY実現へ向けて柔軟に
06リブランディングは3ステップ
リブランディングを社内プロジェクトとして行うには、大きく3つのフェーズがあります。 まず始めに、自分たちのことを改めて知り分析するフェーズ。それからその分析を基に、自分たちの目指す未来へ向かうために、新しいブランドをつくるフェーズ。 最後に、それらつくったもの、決めたことなどを伝え、浸透させていくフェーズです。 自分の携わっているブランドもリブランディングが必要かも?そう考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
リブランディング3つのフェーズ
1:分析のフェーズ
・プロジェクトチームをつくろう
・あるべき姿を確認しよう
・現状を分析しよう
2:戦略立案のフェーズ
・理想の未来を描こう
・現状と未来のギャップを埋める方法を考えよう
・足りないリソースを知ろう
・ブランドパートナーを設定しよう
3:浸透のフェーズ
・内部浸透を優先しよう
・外部浸透はブランドパートナーを基準にしよう
・クリエイティブの統一感を意識しよう
・浸透は段階的にチューニングしよう
07Whyを変えると、新規のブランディングになります
リブランディングを行う際、成果を図るのは難しいことです。
何を成功とし、何を失敗とするか、答えはひとつではありません。 難しいけれど、新たなブランドにきちんと生活者がついてきてくれるかということは、とても気になる点でもありますよね。いまはSNSなどもあり、ブランドに対する生活者の意見が簡単に見え、拡散される時代なので、リブランディングによって「変わってしまって残念」「好きでなくなってしまった」と言われてしまうのは避けたいところです。
08成果の出る期間は限定できない
最初のポイントとしては、ブランディングはある程度の期間を設けて効果を考えなければならないということです。 なぜなら、新たなブランドの発表直後に、一時的に売上が上下したり、一部の生活者から賛否両論あるのはよくあることだから。 そもそも短期的に結果を出したいならば、奇をてらったものや一時的に目をひくものをつくってしまいがちになり、それはどちらかというと一時的な広告の範疇です。 本来、リブランディングはブランドや企業を長く続けていくためにやっていくための、その一部。つくって終わりではなく、常に改善を続けていく必要があると考えてみてください。
09小さく変え続けることがリブランディング
ここまで読んでいただくともうお気づきかもしれませんが、リブランディングは1度やったら終わり、やればすぐに効果がでる、というものではありません。リブランディングとは、ずっとブランドが続いていくなかの、ひとつのアクションに過ぎないのです。 社内の状況が変われば、ブランドパートナーの世代が変われば、社会全体の考え方が変われば、その都度ブランドも自分たちの立ち位置を問い直し、チューニングをしていく必要があるはずです。 その中で大切なのは、ブランドは育てていくものだという意識です。 ブランディングは、すでにあるものをそのまま使うのではなく、少しずつつくっていく行為。 定期的に、いまやっている事業は自分たちのミッションやビジョンから外れてないだろうかと問い直したり、ブランドパートナーの声を聴いたりと、その時々、自分たちの立ち位置を考えていくこと、それをずっと続けていくことがリブランディングであり、ブランドをつくるということなのです。
10ブランドの根幹が変われば、それは新規のブランディングになる
ひとつだけ気をつけたいのは、それはブランドの根幹、つまりミッション・ビジョンなどに紐付いていないアウトプットとなってしまったり、いつの間にか根幹を変えてしまっていた場合です。 この場合は、HowやWhatを変えるリブランディングという文脈からは逸れてしまっていますので、リブランディングではなく、まったく別のブランドを新しく立ち上げたという方が正確かもしれません。